労働問題Blog| 長時間労働の削減について その2
長時間労働の削減について その2
 この前のBlogから随分時間があいてしまいました。続きを記載いたします。
 長時間労働をさせてはいけない理由には、この前のBlogに書いたような法的・金銭的な問題だけがポイントではありません。他にも基本的な人間として働かせるうえでの問題があります。

 そもそも、人間が集中できる時間は2時間程度であるという研究もあります。長時間の労働をさせたからといって、時間数に比例した結果が得られるというものではありません。昔のベルトコンベアで流れていくような工場作業なら1時間当たりの作業量はそんなに大きな差はなかったかもしれません。しかし、ホワイトカラー的な労働が増えた現在では、労働時間と業務内容とは比例しません。
 まして、十分な睡眠を取ることもなく働かせ続けるとミスの多発も生じ得ます。大きなミスともなれば損害額も大きくなり、場合によっては人命に関わることも考えられます。そのようなマイナス面を考えれば、しっかり休ませて万全の体調で仕事にあたらせたほうが無理な長時間労働をさせるより効率が良いということになります。

 しかし、多くの経営者の皆様が仰ることは、「早く帰れと言っても、従業員が残業をする」というお話です。これは非常に残念な状況です。本来、残業は従業員が勝手に行うものではありません。会社が与える仕事が所定労働時間内に終わらないことが判明している場合に、会社側から従業員にお願いして居残って仕事をしてもらうものが残業です。従業員がするからと放置していてはいけないものなのです。仕事は「会社が従業員に与えるものである」という基本は忘れないようにしてください。
 とは言っても、現実には会社が与えるかどうかに関わりなく、従業員が定時までに業務を終わらせることができず、そのまま残業となっているのが多くのケースだろうと思います。
 まず、業務内容がどのようになっているのか、洗い直しをしていただく必要があると思います。この時には、頭から「わざと長時間労働にしようとしている」というような考えでは対応しないように注意しなければなりません。従業員から「残りたくて残っているわけではない」と反発されるだけで、問題解決にはならない結果となりがちです。また、業務の内容を把握できていなければ、勝手に現在行っている業務を不要な業務と切り捨てることもできません。勝手に切り捨てた場合も、従業員からの反発で問題解決から遠のくこととなります。何が必要で何が必要ではないのかについては、経営者側がキチンと把握していなければ、長時間労働の削減も難しくなりますので、従業員との話し合いを大切にしていただきたいと思います。

 長時間労働が常態化している企業にありがちなことに、社内の雰囲気として長時間労働をすることがアタリマエになっているということがあります。もし社内が、なんとなく帰りづらいというような雰囲気になっているのであれば、それは会社として望んでいることではないと経営者側から強くアピールする必要があります。これは企業防衛としても重要で、本当に会社側に残業をさせる気がないのであれば、残業を否定していることをしっかり従業員に伝えておかないと、会社として長時間労働を推奨していたこととなりかねません。
 長時間労働を望んでいないことのアピールは、一度言っただけではまたもとに戻ることになりますので、何度もしつこいくらい言っていただく必要があると思います。経営者側が「元に戻っちゃうんだよねー」と言っていたのでは長時間労働の削減はできません。強い気持ちで「長時間労働を撲滅する」と宣言し続けてください。

 そのうえで、業務のシステムそのものを変えたり、労働時間の設定を変えたりするなど、長時間労働にならない現実的な工夫をしていく必要があります。この工夫を行うためには、前段で書きました業務分析がしっかりできていないと、却って業績悪化となりますので、ご注意ください。
 変更していくにあたっては、場合によっては就業規則の作り直しをしなければならないケースもあるかもしれません。どのように対応するかは企業の業務内容によっても変わってくると思いますが、会社側が本気で長時間労働を無くそうとしていると従業員側に伝わるようにしていただかなければ、達成は難しいと思います。

 長時間労働となる一つの理由として、従業員にとって会社以外に居場所がないというケースもあります。例えば、家庭内がうまくいっていない時に、家に帰りたくないがために会社に居続けるというようなケースがあります。あるいは、勉強や習い事、サークル活動などをしている人であれば早く帰る必要が生じますが、そのような「場」がなければ会社にいるしかないというケースもあります。
 昔は会社人間であることが良いことであった時代もありますが、今は会社の中しか知らない人は視野が狭く発想に乏しいという評価になることもあります。会社以外にも個人として関わる場所が増えれば、おのずと会社にいる時間も短くなってきます。そういった方策を考えてみるのも一つの方法ではないかと思います。

 従業員も当たり前に生きて様々なことを考えながら生活している人間であることを忘れないようにしてください。従業員側が行動しやすくするには、どのように対応すればよいのかを考える必要があるでしょう。経営者側の勝手な思い込みで強制的にさせられる…と感じると、どんなに良いシステムでも機能しなくなりますので、ご注意ください。

 次回は従業員が自殺に至るような事態はなぜ起きるのか?について考えたいと思います。
2017.1.20


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