営業手当を支給している場合は、時間外労働手当を支払わなくても良いのでしょうか?
その営業手当が時間外労働手当の性質を有し、実際の時間外労働に対する割増賃金を上回る場合は、営業手当の支払いで良いこととなります
1週40時間・1日8時間を超えて勤務させた場合は、時間外労働として通常の賃金(給与)の1.25倍の割増賃金を支払わなければならないことになっています。通常は、超過労働時間に対してこの割増賃金を支払う義務があるのですが、賃金体系として、この時間外労働割増賃金に代えて、定額の手当を支給していることがあります。

この場合、その手当の名称が何であれ、時間外労働手当としての支払いであることが重要です。
「営業手当」という名称の場合、営業に関する費用を補てんする目的(服飾費、慰労目的等)のこともあり、この場合は時間外労働手当としては認められない事となります。また、同様の労働時間でありながら、内勤者など一部の従業員には支払っていないということがあれば、時間外労働手当の代用としては認められない可能性があります。
当然のことながら、支払っている手当の額は、時間外労働手当として計算した額と同額か上回っていなければ、その差額は支払わなければなりません。

時間外労働手当の代わりに毎月一定額の手当を支給する場合は、就業規則(賃金規程)に、「時間外労働手当として支払うものである」との内容を明記し、その計算方法(何時間分なのか等)についても記載する必要があるでしょう。
この場合、通常の時間外労働に対する支払いなのか、深夜労働手当、休日労働手当にも該当するのかについての取り決めも必要となります。
また、名称も時間外労働手当の代わりであるとわかるようなものとし、従業員の家族等、誰が見ても時間外労働に対する支給であるとわかるようにしておくことをお勧めします。もちろん、名称だけが問題ではなく、実質的に時間外労働に対する支給でなければならないのは当然です。

時間外労働手当を定額で支給する場合は、人件費の予定が立てやすく事務の手間を軽減できる等もあり、また年俸制の場合には対応がとりやすいということになりますが、本来の時間外手当より多額を支給することとなる可能性も高く、必ずしも良策とは言えません。
また、時間外労働手当を定額で支給していたとしても、労働時間の把握は必ず行わなければなりません。

尚、この件に関してはすでに判例もあり、労働基準監督署でも有効としていますが、実際に訴訟等で争った場合は認められない事があります。特に相手が一人労組だった場合は御注意下さい。





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2011.12.5


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