年功序列型の賃金規程を改定して能力主義・成果主義型の賃金規程にするにはどのような条件が必要ですか?
年功序列型から能力主義・成果主義型への変更には高度の必要性と合理的な内容である必要があります
日本の企業においては、長期間、年功序列型賃金体系は企業内組合・終身雇用と共に、基本的な労務管理の手法として使われてきました。しかし、時代の変化と共にそぐわなくなってきた結果、能力主義・成果主義型の賃金体系の導入を考えられる企業も増えてきました。
能力主義・成果主義型の賃金体系は、正しく運用すれば合理的な制度と言え、意欲のある従業員にとっては年功序列型よりモチベーションをupさせることが可能でしょう。完全に年功序列型賃金制度を廃止することは不可能だとしても、能力主義・成果主義型的な賃金体系とすることは、各社で検討されていることと思います。

しかし、能力主義・成果主義型の賃金体系への移行は、従業員によっては年功序列型賃金体系より給与額が低下する可能性もあり、給与額が低下するとなれば、それは不利益変更となります。個別の労働契約による給与額の変更ではなく賃金体系そのものの変更となれば就業規則の変更となり、従業員の全員が不利益とならないとしても全体的な不利益変更となります。また、給与額の低下は、不利益変更の中でも重要な変更となります。

就業規則において、賃金(給与額)等の重要な権利や労働条件を従業員の不利益に変更する場合は、「その不利益を受忍させることが許容できる高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるとき」は、労働者の合意がなくても効力を生じるという判断が判例等においても一般的にあるようです。
この合理性の有無は、1.不利益の程度、2.変更の必要性の内容及び程度、3.変更後の就業規則の内容の相当性、4.代替措置その他関連する他の労働条件の改善状況、5.労働組合等との交渉経緯、6.複数労働組合がある場合の他の労働組合や従業員の対応 などを総合的に考慮して判断されます。
どの程度の状況であれば「高度の必要性があった」と認められるかはケースバイケースではありますが、会社の経営危機の状況や結果的に不利益となる従業員の数(割合)によっては認められやすくなることもあります。

しかし、そうではあったとしても、いきなり賃金体系を変更すれば間違いなくトラブルとなります。まずは経過措置や代替措置、他の労働条件の改善などを行い、その上で従業員に十分な説明をして理解を得る事が重要です。





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2012.3.13


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