人事考課により降格した場合は給与を減額しても良いでしょうか?
人事考課による降格は会社に裁量権が広範囲で認められますが、それに伴う減給には根拠規定や本人の合意が必要です
人事考課を行って、それにより昇格・降格させるということは、どこの企業でも行っていることと思います。しかし、多くの場合は昇格で降格させることは比較的少ないのではないかと思います。とはいえ、正しく評価をすれば、降格させざるを得ない場合も生じてきます。
まずは、その人事考課の結果が正当なものでなければ、降格そのものが人事権の濫用とされる場合があります。業務上、組織上の必要性の有無及び程度、当該従業員の受ける不利益の性質及びその程度、過去の社内における降格等の運用状況等を総合的に考慮して適切である必要があります。このためにも、就業規則等に降格となる場合の条件等を明記しておく事が望ましいでしょう。

人事考課の結果、昇格させる場合は給与額も合わせて昇給する事には特に問題はありませんが、降格させた場合に給与額も合わせて減給する事は、重要な労働条件の不利益変更となりますので、降格させたからというだけで減給することは好ましくありません。減給をするには事前にその権限を会社に与えているなど、会社と従業員の間に合意がなければなりません。この合意の存在は明確に示すことができなければなりません。
就業規則に人事考課によって降格させることがある事の定めがされていたとしても、それに伴って減給されることが規定されていなかった場合、減給が認められない可能性もあります。
労働契約書には昇給に関する事項も記載しなければなりませんが、減給の可能性があるのであればその記載も必要となるでしょう。そして、就業規則にも人事考課の結果として降格による減給があるのであれば、それについても明記する必要があります。

尚、管理職から一般職への降職により役職手当を支給しなくする事については、その降職そのものに問題がない限り、手当がその地位(役職)に基づき支払われるものである以上は当然の措置と言えます。





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2011.10.23


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