【マイナンバー制度】個人番号(マイナンバー)の収集・保管の方法は冷静に!
2016年1月となり、いよいよマイナンバー制度の本格稼働となりました。とはいえ、一般的には今すぐ個人番号(マイナンバー)を使うということではありませんので、慌てて何かをしなければならない、という事はありません。
会社が行う手続で、この1月からすぐに個人番号(マイナンバー)の記載が求められるのは、雇用保険の被保険者資格取得届、被保険者資格喪失届、高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書、育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書、介護休業給付金支給申請書のみです。つまり、これらに該当する方が1月にいらっしゃるのでなければ、今すぐ番号を集める(従業員に提出させる)必要はありません。全社的に個人番号(マイナンバー)が必要となるのは、今年の年末調整の時です。本格稼働になったからといって、今すぐ慌てて個人番号(マイナンバー)を集めなければならないということではありません。
マスコミ報道では、「IT企業によるインターネットを利用した番号収集が行われている」や、「マイナンバー保険が行われている」などと、まるで煽るかのような報道もされていますが、多くの中小企業ではIT企業に個人番号(マイナンバー)の収集・保管を依頼する必要はありません。まして保険を掛けることは通常であれば必要ありません。
くれぐれも、このような報道に煽られて、慌てて何かをしなければならないと思われる事のありませんよう、落ち着いて冷静に御対応いただきたいと思います。法文上、個人番号(マイナンバー)が企業から漏洩した場合は、懲役や罰金という規程がありますので、これを恐れて何かしなければならない、とお考えになられる場合もあるかと思いますが、本当にそれが必要なのかどうかを冷静に御判断いただきたいと思います。
インターネットを利用して番号を収集し、クラウド上で保管するという方法は、一見良いもののように思われるかもしれませんが、実際には紙で収集して保管するより、危険度は高くなります。特に、一定のIT企業が大々的に収集・保管している場合は、番号を狙う側からすれば、その方がわざわざドアや窓を破って物理的に侵入し金庫をこじ開けて1社分の個人番号(マイナンバー)を盗み出すより、遥かに簡単に多くの数の個人番号(マイナンバー)を得る事が可能となります。
これは、他社に依頼せず社内的にインターネット等を通じて番号収集をされている場合も同様です。その場合は、個人番号(マイナンバー)を長時間インターネット上に放置する事のないよう、十分に御注意なさって下さい。
個人番号(マイナンバー)を収集・保管するツールがインターネットに繋がっている以上は、いつ盗まれてもおかしくない状態であると認識していただきたいと思います。これは、パソコンやスマホだけではなく、コピーなどの複合機でもインターネットに繋がっている場合は外部からの侵入を受ける可能性が十分にありますので、御注意下さい。
尚、仮に外部の企業に任せていたとしても、その委託先から番号が漏洩した場合に、委託した企業側が全く無問題となるかというと、必ずしもそうではありません。委託する側には、委託先をキチンと監督する義務が課されています。もしも委託先の選択を間違え容易に漏洩させる状況を作ったとなれば、委託する側にも大きな責任があると判断される事にもなります。
外部に任せたからといって、必ず責任回避できるというものではありませんので、十分な御注意をなさって下さい。
尚、外部に委託して保管していたとしても、実際に税務署や年金事務所へ提出する際には各企業で個人番号(マイナンバー)を扱わなければなりませんので、いずれにしろ各企業での保管の問題は生じます。この意味でも、外部に任せたからといって問題が無くなるわけではありません。
個人番号(マイナンバー)の収集・保管に関しては、慌てて委託先を決める事なく、年末調整で必要となるまでの間(大体は、今年の10月末頃までになるかと思います)に、しっかり収集・保管の方法を御検討いただき、じっくり対策を立てていただくのがよろしいかと思います。
もちろん、それまでの間に雇用保険の手続に該当する従業員が発生した場合は、適宜ご対応いただく事となります。このため、「特定個人情報取扱規程」の策定は急いでいただいた方が良いかと思います。これについては、社会保険労務士にご相談いただければ、通常の社労士であれば対応できると思います。
マイナンバー保険に関しては、当然のこと乍ら保険を掛けたからといって情報漏洩が生じないというものではありません。保険が抑止力となるのは保険料を掛けている本人がその行為を行う場合であって、会社が保険料を支払っている限りは従業員による情報漏洩を防ぐ機能はありません。
社会保険労務士の紹介にしても、そのような保険を利用しなくても今の顧問社労士に聞いていただくなり、社労士会等へお問い合わせいただくなりしていただければ事足りるかと思います。
その保険は何のために掛けるのか、よくお考えいただきたいと思います。
くれぐれも、煽られて安易な対応をなさいませんよう、御注意下さい。
2016.1.6