営業譲渡により関連部署の従業員も引き継ぎました。この従業員に関する前社の未払賃金を当社で支払わなければならないのでしょうか?
譲渡契約がどのような内容となっているかにより未払賃金の支払義務が変わります
権利義務関係が一括して承継される合併の場合は、合併前の会社(消滅会社)の雇用関係も当然に合併後(存続会社)に承継され、未払賃金に関する義務も承継されることとなりますが、営業譲渡は会社そのものの包括承継ではありませんので、全ての権利義務が当然に承継されるわけではなく、どの権利義務が承継されるかは譲渡契約によって定められることとなります。そのため、営業譲渡により従業員も引き受ける場合は、譲渡契約によって労働契約の譲渡が定められた上で、当該労働者の同意をもって譲受(引受)会社に労働契約が移転することとなります。
この場合において、未払賃金に関してどちらの会社に支払義務があるのかについても、譲渡契約にどのように定めるかによって変わってきます。もし、譲渡契約または債務引受契約において、未払賃金債務の譲渡も含むことと定められていれば、譲受(引受)会社に未払賃金の支払義務があることになります。

ただし、営業譲渡により関連部署の従業員も引き継いだ場合は、全体的判断としてその譲渡された部門に関する包括承継とみなされ、未払賃金債務も引き継ぎされるものとされることもありますので、営業に直結する部分だけでなく従業員に関する部分も譲渡契約に明記していないなどの不備がないよう十分な注意が必要です。
譲渡契約の内容は非常に重要なものとなります。細かい部分まで双方で十分に話し合いをされ、合意をされた上で取り交わされる事が大切です。




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2011.7.3


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